彼女にもう一度
全く見知らぬ町をぶらぶらと歩いていると、少し大通りに出たところで、新聞の号外が大々的に配られていた。


「あの大物野球選手の引退だ!」


大量の新聞をかかえた男が、大きな声で叫んでいる。


興味あったがどうせ僕のことは見えないだろうと思い、直接彼のそばに寄ってその新聞を覗きこんだ。


「……この選手……」


新聞に大きく書かれたその名前に、僕は少し戸惑った。


それは、僕が幼いころ活躍していた選手で、今はプロ野球チームのコーチになっている男だった。


頭の中で計算が行われる。

「……15年前か!!!」


どうやらここは15年前の世界。

夢にしてはやけに周りの世界がリアルすぎる。

これは一体どうなっているんだ?



頭を叩いたり、頬っぺたをつねったりしてみても、一向に現実世界に戻らない。


僕の心に動揺が生まれる。


これは夢じゃない……!?
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