本当
緊張しながら体育倉庫へ行くとそこには誰もいない。

((イタズラかな))

その時、

「待った?」

聞いたことのある懐かしい声に振り返る。
そこに立っているのは…笑みを浮かべた冬歩。

「もしかして…男子を自分を呼んだとでも本気で思ったの?」

「そんな訳無いじゃん!!!」

「あはは」

と笑ったかと思えば真剣な目で私を見つめる。

「そんなつもり…無いよ」

何を聞かれても本当に何もしていない私はそれ以外に言うことがない。

「嘘!!!!!」

一気に目つきが更に鋭くなって睨まれる。

((負けるもんか))

そう思って私も必死に睨み返す。

「正は…あたしを抱きながら間違えて『蜷』って呼んだの」

少しの間睨み合った後わずかに冬歩の瞳が揺れた。
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