終われないから始められない


なんだ〜?

「一目で気に入ったって。
息子が居るんだけど、嫁に欲しいって。
鼻息荒くしてたぞ」

「誰を?」

「…、祐希をだよ」

「私?」

「そう、祐希」

「あっ」

…多分あのおじさんだ。
職業上、名前を出して話す訳にはいかないけど。

「解ったみたいだな。
まあ、誰がなんて言って来ても仕事中だとか何とか言って、そんな話は無視しろよな」

「大丈夫だよ、待ち時間の暇潰しに、からかってるだけだよ」

はぁ、これだから…、安心出来ないよな、祐希は。

「とにかく、相手にすんなよ?」

「うん、解ってる」

本当に解ってんだかどうだか、疑わしいもんだ。

「ところで、意地悪お局とか居ないのか?」

「居ないよ。みんないい人ばっかり。
ネチネチいじめる、そんなドラマみたいな人、そうそう居ないよ」

「そうか、なら良かった。
女同士ってそんな時は結構陰湿って言うから。
なんかあったら、無理して限界まで我慢する事無いからな?
そんなことで頑張り過ぎるなよ?」

「うん、大丈夫」



「弘人〜、オムライスでいい?」

「おー、いいぞ」

「じゃ、パパッと作っちゃうから先にお風呂入ってくれば?」

「そうする」

弘人のTシャツもスウエットも、下着も。
仕事用のツナギも、いつの間にか当たり前に置いてある。

極々自然に、泊まれる日はこうしてうちでご飯を食べて過ごすようになった。

明日は土曜で、弘人も休みらしい。

久し振りにゆっくり出来そう。

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