終われないから始められない


「ナンダカンダ言っても、祐希の作るメシ、美味いよな」

「いやいや、本当、大したモノ作れないし、レパートリーも少ないし」

「俺は充分だと思うけどな」

タオルでガシガシ頭を拭きながら美味しそうにビールも飲んでる。

私は全く飲めない。
何基準で判断されてるのか解らないけど、下戸です、て言うと、またまたぁー、なんて必ず言われる始末。

(※未成年の飲酒は禁じられています)

この先、接待なんて借り出される事もあるのかもしれない。
無理に飲む事になるのだろうか。

「祐希?おーい、祐希?」

目の前で手を振られていた。

「あ、ごめん、ちょっと金星まで飛んでた」

「それはそれは、随分遠くまで。
それで?
魂が抜けるほど何考えてたんだ?」

「んー、これから仕事でね、お酒すすめられる時も来るのかなって」

「あー、これか。
まー、無くはないだろ。
接待もたまにはあるんじゃないのか?」

「…だよね」

「まー、昔と違って、無理強いみたいな事は無いんじゃない?
セクハラだのパワハラだの、今は簡単にハラスメントだらけだからな。
うっかり触れでもしたら、訴えられかねないし」

「う゛〜〜ん。願わくは、誘われない事を祈る」

「だな。…祐希、悪い。…先、寝てていいか?
俺、何だか、今日は酔った…、いきなり睡魔が来たみたいだ」

「本当?疲れてるんじゃない?
弘人が酔ったなんて言うの珍しい。
いいから気にしないで寝て?
私、片付けたらお風呂にするから」

「じゃ、わりい、お先」

「うん、一人で行ける?」

「大丈夫だ」

弘人は隣の部屋にフラフラと歩いて行った。

…弘人。

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