終われないから始められない
お風呂からあがり、寝ている弘人の顔を覗き込んでみる。
スースーと穏やかな規則正しい寝息がする。
…良かった。良く眠っているみたい。
苦しそうでもないから、疲れてただけなんだなと、ちょっと安心した。
起こさないようにそ〜っとベッドに滑り込む。
フフ、同じ匂いがする。
後ろから弘人の背中にそっとくっつく。ギュッと腕を回して抱きしめた。
シーツの擦れる音がやけに大きく思えて、起こしてしまわないかドキドキした。
…首に唇で触れて見た。起きてたら絶対出来ない。ドキドキが大きくなって弘人に伝わって無いか焦った。
慣れないことはしちゃダメだ。
私達は、まだ…なんて言うか、“関係"はまだ無い。
そのことに対して、特に焦りだとか不安は無い。
今のまま、いつかは自然な流れでいいかなと私は思ってる。
何がどう自然な流れと言われても、具体的には答えられないけど。
何せ私はお子様だから。
…弘人はどう思ってるんだろう。
こうして、お互いが抱き締め合って眠る行為が安心で安らぐ。
上手く言えないけど、幸せだな〜と思う。
おじいちゃんとおばあちゃんになってもこうして居られたらいいな…。
…う、う、ん。
あ、弘人、起きたみたいだ。
「あっふっ。ん゛〜、はぁー。
なんかスッキリ〜。
1時間くらいか?爆睡した気分だ」
体を捻ってこっちに向きながら腕を伸ばして唸る。
「祐希…、いい匂いだ。
シャンプーか?ボディソープの匂いかな?」
鎖骨の辺り、スーッと深く息を吸い込む。
「弘人。ボディソープ、一緒だから」
「じゃあ、シャンプーだな」
髪の毛をクンクンする。
「クスクス。もう。ちょっと眠って起きたら凄い元気なんだから。
心配したんだからね?ちょっと」
「あ゙ー、マジで眠ったら、疲れがふっ飛んだ感じ。…大丈夫だよ」
いきなりチュッておでこにキスされて、ギューッと抱きしめられた。
恥ずかしくて弘人の胸に顔を埋めた。
「ヤバいな祐希…。
ヤバいかも。もう…絶対ヤバいな。祐希が誘惑したから」