終われないから始められない
このまま終われない
日没が次第に早くなっていく。
はぁ…。
また年末の忙しさがやってくる。
一年は年々早くなる。
あれから、お互い都合がつかず、仕事終わりに食事をする程度を何度か繰り返していた。
恋人同士というわけでもないから、何処か遠慮もある。
改めて休みの日に会う事もなかった。
断っているのでもなく、断られているのでもない。
互いに誘わないのだ。
数時間を楽しく過ごせる距離が居心地が良かった。
一緒に食事をしてると、申し訳なく思う事がある。
私はお酒が飲めない。
飲まなくてもテンションは合わせられるのだけど、素面相手では、時に詰まらなくさせているのではと考えてしまう。
敢えて聞いて見た。
橘さんは気にならないと言う。
「そりゃ、男心のどこかに、ほんの少し、少しだよ?
送り狼が居ない事も無いけど?
ほろ酔いはチャンスだと思ってるヤツも居るからね。
さっ、そろそろ送っていくよ」
最近はアパートの前迄送ってくれるようになっていた。
暗くなるのも早いし、物騒な世の中だ。
事件の無い日はないくらい。変質者の噂も聞く。
何かあってからでは取り返しがつかないからと、部屋に入り、鍵をかけ、明かりが点くのを確認してから帰っていく。
大切な人を突然失うなんて…どれ程のことか…簡単には、はかり知れない。