終われないから始められない


在り来りな誘い方だけど、初詣に一緒に行かないか、と誘う。

人出は多いが、休みに改めて出掛けるには、神様を盾に、デートっぽく無くて良いだろうと思った。

待ち合わせというか、同時に家を出て、いつもの交差点で落ち合うことにした。


祐希は交差点から離れて立つ。
それは赤信号を待つ時、必ずと言っていいほど限界まで後ろで待っている。

…状況が過ぎるんだろう。
交差点に居ることすら避けたいことだろう。


俺達は長い列のあと、散々待った割にはアッサリと参拝を済ませ、神社を後にした。

約束はしてなかったけど、このあと少し付き合って、とドライブに誘った。

郊外に出て走れば道は空いていた。
特に目的は無かった。

ただもう少し一緒に居たかった。

俺は素直に話した。
もう少し一緒に居たい、と。

途中、開いている貴重なカフェに立ち寄り、コーヒーを飲んだ。

祐希はチーズケーキが好きだと言う。

甘いモノが苦手な俺は、同じようにケーキセットにして、俺の分も祐希に譲った。

このタルトも好きなんですよ、なんて言うから、なんだ早く言ってくれればそうしたのにと、笑い合った。

遠慮とはちょっと違うような、言うのを躊躇ったようにも見えた。


少し走っていると前が開けて来た。

海だ。

「寒いけど、降りてみる?」

聞いてみると、頷いてついて来た。

波が少し荒く、潮風が刺すように冷たい。


寒いだろうと、俺は祐希の肩に許可無く腕を回した。

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