降車駅
降車駅




 なんとなく降りた赤い屋根の駅は、太陽の匂いがした。



 一番安い切符を買ったのが早朝。


適当に乗った普通電車に揺られて、四時間は経っただろうか。


乗り越し精算額は二千円弱で、思ったより少ないな、と思った。


片道で樋口くらいぶっ飛ばそうかと思っていたんだけど、なんて。



 首から下げた、愛用のデジタル一眼。


薄い財布はショートパンツのポケットに。


それから、胸には反逆精神を。


荷物はそれだけ。



 うきうきした気分で改札を抜けると、ポニーテールの毛先が首筋をくすぐった。



「人、いないな……」



 思わず呟いた。

だって、通行人一人見当たらない。



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