降車駅



 浅はかだったと反省しながら角を曲がると、見覚えのあるのぼり旗が見えた。



「いちごと、レモン、一つずつお願いします」



 そう言って、ばあちゃんに野口を手渡すと、少年が「おい、俺メロン」と背後で言った。



「あれ? レモンじゃなかったっけ?」



「メロン」



「ま、いいじゃん。あたしレモン食べたいし」



 お釣りの五百円玉を受け取りながら、支払い主の権力を行使して少年を黙らせる。


しばらくしてやってきたかき氷は、ちゃんとレモン色といちご色だった。


あたしは少年にレモンのかき氷を手渡す。



 それから、いちごのかき氷についていた先っちょがスプーン型になったストローで、「一口ちょーだい」と言いながら、少年のかき氷を二口食べた。



 キーン。



 レモンシロップの甘酸っぱい香りと氷の冷たさに、あたしはギュッと目をつむった。


思えばかき氷なんて食べたの、小学生のときに遊びに行った夏祭り以来だ。



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