降車駅
駄菓子屋の前で氷を貪り食いながら、あたしは「少年、学年は?」と問いかけた。
少年はあたしのいちごを物欲しそうに見ながら、それでも欲しいとは言わずに、「中三」とだけ答える。
素直じゃないなあ。
実に中学生らしい。
「お、受験生じゃん。あたしもなんだよ。受験生同士仲良くしようではないか」
「あんた、同い年なの」
「違う。三つ上」
あぁ、そっちか、と、少年はつぶやいた。
そう、そっちだ、と、あたしもつぶやいた。
「ところで少年、このあたりのおすすめスポットを教えてくれたまえ」
食べているうちに溶けきって液体と化した残り三分の一のかき氷を喉に流し込んで、あたしは尋ねた。
「おすすめスポット? 観光できるようなところなんかねぇよ」
「いや、観光とかではなく。……そうだなぁ、じゃあ、たとえば、君が一人になりたいときに行く場所、とか」
「そんなの、普通に俺の部屋」