降車駅
「お、大胆だねえ」
にまっと笑って少年を茶化すと、少年は「あ、いや、……べつに、部屋来いって意味じゃなくて」と、怒ったような顔でぼそぼそと言った。
照れてる照れてる。
実に中学生らしい。
「えーとじゃあ、君がよくぼんやりする場所、とか」
「あんた何がしたいんだよ」
「穏やかな気分になりたいだけだよ。ストレスフルな現代社会に生きるあたしたちなら、当然持ち合わせている願望じゃないかね」
「おっさんくさ」
「あ、君、今おっさんを馬鹿にしただろう」
駄目だよー。
日本社会は半分以上はおっさんが動かしているんだから。
そう言うと、少年は「ハイハイ」と、うんざりしたような顔で言った。
そして、駄菓子屋に引き返すために通った道へ、おもむろに歩き出す。
「少年、どこ行くの?」
「……俺がよくぼんやりする場所、行きたいんじゃなかったの」