降車駅




「え、連れてってくれるの? どこ?」



 小走りで少年の隣に並んで、あたしは少年の顔を覗き込んだ。

すると、少年は短く、「川」と答えた。



「川! あたし、中学の修学旅行で行った京都の川しか見たことない!」


「鴨川?」


「違う。大堰川。嵐山の」



 あぁ、そっちか、と、少年はつぶやいた。


 そう、そっちだ、と、あたしもつぶやいた。



「そんな立派な川じゃねぇよ、この町の川は。あんま期待すんなよ」


「おっけい! 期待しとく!」


「話聞けよ」



 呆れたように肩をすくめて、少年は言った。

ちらりと横顔を見上げると、こめかみに汗が流れるのが見えた。



「ねえ、そういえば君、学校は?」



 唐突に気になって、あたしは少年の横顔に問いかけた。


何を隠そう、今日は九月一日。


全国のほとんどの学校で始業式が行われている真っ最中である。




< 13 / 26 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop