降車駅
「え、連れてってくれるの? どこ?」
小走りで少年の隣に並んで、あたしは少年の顔を覗き込んだ。
すると、少年は短く、「川」と答えた。
「川! あたし、中学の修学旅行で行った京都の川しか見たことない!」
「鴨川?」
「違う。大堰川。嵐山の」
あぁ、そっちか、と、少年はつぶやいた。
そう、そっちだ、と、あたしもつぶやいた。
「そんな立派な川じゃねぇよ、この町の川は。あんま期待すんなよ」
「おっけい! 期待しとく!」
「話聞けよ」
呆れたように肩をすくめて、少年は言った。
ちらりと横顔を見上げると、こめかみに汗が流れるのが見えた。
「ねえ、そういえば君、学校は?」
唐突に気になって、あたしは少年の横顔に問いかけた。
何を隠そう、今日は九月一日。
全国のほとんどの学校で始業式が行われている真っ最中である。