降車駅



 それから少年はまた前を向いて、「じゃあ賢いあんたに一個、質問」と、どこか焦点の合わない、ぼんやりとした声音で言った。



「何だね少年」


「学校の勉強ってさ、なんか役に立つわけ?」



 無感動に言った少年の言葉に、今度はあたしが吹き出した。



「なんだ、そんなこと」



 クスクス笑うあたしを、少年は怒りとも呆れともつかない表情で見つめる。



「君は勉強が苦手?」



 まだ引っ込まない笑いを引きずりながら問うと、「嫌い」と、少年は短く答える。



 あたしは再び笑った。

少年の問いも、その短い答えも、あまりに子どもっぽくて、陳腐だったから。



 実によくある疑問。

答えなんてわかっているのに、嫌いだから、逃げたいから、提示する。


さもいろいろ考えているかのように、賢そうに。



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