降車駅
でも威力が足りなかったみたいで、少年は驚きはしたけど痛がりはしなかった。
腹いせに二撃目をお見舞いしてやろうと構えたところ、少年がふいに、「ほら、あれ」と、前方を指差した。
いつのまにかあたしたちは住宅街を抜けて、再び両サイド田んぼロードに出ていた。
そして少年が指差す道の先には、草で覆われた急斜面。
「土手だ。本物の」
映像の中でしか見たことない、と言うと、少年はげんなりしたような顔をする。
「あんた、都会に住んでんのな」
「そだよ。マンションの周りビルばっか。悪いか」
「べつに悪かねぇけど、田舎に来たこともねぇの?」
「ん、必要なものは家の周りで調達できるからね」
「金持ちはいいねぇ」
小馬鹿にするように言った少年に、あたしは「そんないいもんでもないよ」と、苦笑してみせた。