降車駅



 でも威力が足りなかったみたいで、少年は驚きはしたけど痛がりはしなかった。


腹いせに二撃目をお見舞いしてやろうと構えたところ、少年がふいに、「ほら、あれ」と、前方を指差した。



 いつのまにかあたしたちは住宅街を抜けて、再び両サイド田んぼロードに出ていた。


そして少年が指差す道の先には、草で覆われた急斜面。



「土手だ。本物の」



 映像の中でしか見たことない、と言うと、少年はげんなりしたような顔をする。



「あんた、都会に住んでんのな」


「そだよ。マンションの周りビルばっか。悪いか」


「べつに悪かねぇけど、田舎に来たこともねぇの?」


「ん、必要なものは家の周りで調達できるからね」


「金持ちはいいねぇ」



 小馬鹿にするように言った少年に、あたしは「そんないいもんでもないよ」と、苦笑してみせた。


< 17 / 26 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop