降車駅
「いかにも金持ちですって家に住んで、いかにも金持ちですって私立学校に通って、毎日いい大学に行くために勉強ばかりする。
平坦で、歩きやすくて、どこまでもつまらない道を、ずっと同じ歩幅で、毎日同じ距離だけ歩くんだ」
ロボットみたいだろ、と言うと、少年は「うえぇ」と顔をしかめた。
「そういうのってさ、全く舗装されてない獣道と、どっちが辛いんだろうな」
土手の急斜面を見つめて、少年は言う。
あたしは「さあね」と言って、斜面を一気に駆け上がった。
うわあ。
思わずそんな間の抜けた声が出た。
登りきった土手の反対側の斜面を下って、河辺に立つ。
昔見た大堰川ほど大きな河ではないけれど、予想していたよりも対岸は遠い。
「ねぇ、少年」
追いついてあたしの隣に立った少年に、小さな声で呼びかけた。
「あたしはね、今日、誰もあたしを知らないところに行きたかったんだ」