降車駅
「……はあ」
「なんてね。中二病っぽいかね」
あはは、と笑った声に、感情を混ぜるのを忘れていた。
平面的な笑い声は真昼の太陽の熱で溶けて消えた。
誰もいない、静かな河原で、水の音だけがあたしたち二人の間を流れていく。
沈黙。長い、長い、ようなそれは、長い気がするだけで、実はそれほど長くはないのだろう。
「でも俺も、そういう気分になりたくなるとき、あるよ」
その静けさを破って、少年はそんなことを言った。
「うん。だろうね」と言って、あたしは笑う。
今度は立体的な笑い声で、「馬鹿みたいだよねぇ」と。
「特別辛い境遇なわけでは決してない。特別悲しいことがあったわけでは決してない。
それなのに、ときどき意味もなく寂しくなってみたり、悲しくなってみたり焦ってみたりする」
「……うん」