降車駅
「そういうの全部わかってるのにさ、……わかってても、辛いのは消えないんだよね」
長い長いあたしの唐突な独白を、少年は黙って、じっと、キラキラ光る河面を見つめながら聞いていた。
話し終えてもその目は河面の光をぼんやり見つめていて、聞いていたのかな、と、ふと不安になる。
けれどやがて、その無表情をほんのわずかに和らげて、少年はあたしを見た。
「……すっげぇ、わかる」
言って、少年は草の上に座り込んだ。
その声は涼風のように軽かった。
あたしもその隣に体育座りをする。
不覚にも、少年の言葉が、自分でも情けないくらいに嬉しかった。
整然とした方程式で埋め尽くしたルーズリーフをビリビリに引き裂いたときのように、そのたったの一言は、あたしのドロドロでぐちゃぐちゃで重たい心を、津波のように呑み込んで洗い流していく。