降車駅



 こういう景色はいい。



 広くておおらかで、空気の匂いが爽やか。


目に映る青と緑が、あたしの全部を洗い流してくれそうな気がする。


答案用紙やコンシェルジュ付きの高級タワーマンションや、

きっちり折り目のついた膝丈のプリーツスカートなんか、

なんてちっぽけなんだろうって思える。



 鮮やかな一面の緑を、パシャ。



 道に沿ってずっと歩いて行くと、永遠に続くと思われた道路は十字路に差し掛かった。

まっすぐ行けば山だった。


そして、手作り感のある矢印看板が右を指して「公民館」って言っていた。



 だからあたしは、左に曲がる。

サンダルで山登りは辛いし、道標のないほうへ行きたかったから。



 左に曲がっても延々と続く、両サイド田んぼロード。


歩行距離にしてセンター街の端から端までくらいだと思うんだけど、ここまで景色が変わらないと、もう笑えてくる。



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