降車駅
民家の中にぽつんぽつんと現れるそれらの前では、ご近所さん同士らしきおばさまたちが立ち話をしている。
そういうの、あたしが住んでいるあたりでは全くない。
同じマンションの住人でも、せいぜいすれ違ったときに挨拶するくらい。
あたし、隣の部屋に住んでいる人の顔も知らない。
だから、そういうの見てると、なんとなく暖かい気持ちになる。
そんなことを思いながら、足の向くままに歩いていると。
「ん……?」
家と家に挟まれた、一軒の和菓子屋さん。
「御菓子司 京屋」と、看板が出ている。
わらび餅ののぼり旗と、くず餅ののぼり旗とが入り口のわきに並べて立てられ、
あべかわ餅、桜餅、かしわ餅、おはぎ、ういろう、とマジックペンで書いたA4の紙が玄関のガラス引戸に貼られている。
その紙の前に、制服姿の坊主が立っていた。