降車駅



 民家の中にぽつんぽつんと現れるそれらの前では、ご近所さん同士らしきおばさまたちが立ち話をしている。



 そういうの、あたしが住んでいるあたりでは全くない。


同じマンションの住人でも、せいぜいすれ違ったときに挨拶するくらい。


あたし、隣の部屋に住んでいる人の顔も知らない。



 だから、そういうの見てると、なんとなく暖かい気持ちになる。



 そんなことを思いながら、足の向くままに歩いていると。



「ん……?」



 家と家に挟まれた、一軒の和菓子屋さん。

「御菓子司 京屋」と、看板が出ている。


わらび餅ののぼり旗と、くず餅ののぼり旗とが入り口のわきに並べて立てられ、

あべかわ餅、桜餅、かしわ餅、おはぎ、ういろう、とマジックペンで書いたA4の紙が玄関のガラス引戸に貼られている。



 その紙の前に、制服姿の坊主が立っていた。



< 6 / 26 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop