横顔だけじゃ、足りなくて
それからは会話がなく、二人して黙々と文字を目で追っていた。
時刻は6時になろうとしていた…
もうそろそろ部活が終わるかな?
「あの、私…
そろそろ帰りますね」
恐る恐る立ち上がり、本に栞を挟んだ。
すると男の人は読んでいたページに葉っぱを挟んで私を見上げた。
またバッチリ目が合ってしまった…
「えっと、名前…
教えてくれませんか?」
さすがに名前を知らないで帰るのには気が引ける。
名前ぐらい知りたい…
するとまっすぐ私の目をみつめてきた…
『じゃぁさ…名前、見つけてよ』
「えっ?」
『俺の名前…
次、会う日までに』
それだけを言うと、ソファーから立ち上がって歩いて行ってしまった。
次って言ったよね?
また、会えるのかな…
そんな事を考えてしまった自分が恥ずかしい…
私は図書室の先生に本の貸し出しを申請し、那雲が待つ昇降口へと足を進めた。
名前…
明日にも千加を連れて探しに行ってみようかな。