横顔だけじゃ、足りなくて



-那雲 side-


部活帰りに急いで学校に車を走らせていた彩葉さんを見かけ、急いで学校へと引き返した。


話によると、真彩がまだ家に帰っていないらしい。

あんなに笑顔で教室を出ていったのに、何かがおかしい…


そう思い、辺りを探すと学校付近にある公園のベンチに、一人で俯く真彩の姿があった。




『真彩、おい真彩!』




何度呼びかけても返事がない。


頬に手を当てると、雨で身体が冷えているせいで冷たかった。


こんな雨の中じゃ絶対に風邪をひく、そう判断し真彩を抱きかかえて彩葉さんの車に乗せた。


そのついでに家まで送ってもらい、今は真彩の家にいる…


少し心配だから、もう一度顔を見てから帰ろうと思った。




『姉ちゃん、なんで公園にいたのかな?』




真彩の弟、虹二がリビングで心配そうにしている。


非常に仲がいい姉弟だなって、見る人のほとんどが口を揃えて言う。




『もしかして…』


『那雲兄ちゃんなんか心覚えがあるの?』




思い当たるのは、一つしかないだろ…


真彩が誰の約束なしに、公園で一人待つはずがない。


約束の相手なんてアイツしかねーだろ…




『いや、真彩のその…
アレだ!好きな人ってやつ…』


『あー、それでね。
確かに最近姉ちゃんずっと笑顔だもんなー』




確かに、それはわかる気がする…



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