横顔だけじゃ、足りなくて



けど、今7時半だぞ?


だいたい学校が終わったのは、3時半ぐらいだし、4時間も待ってたのか!?




「那雲くん、今着替えとか終わったから少し顔を見てあげて?」


『うん』




階段から降りてきた彩葉さんは、さっきと焦った様子はなくなりいつもの笑顔に戻っていた。


階段を上がり、ノックをしてから真彩の部屋に入った。


ベッドでしんどそうにしている真彩に近づく…




「先輩、約束したのに来てくれなかった…」


『…』


「忘れちゃったのかな…」




俺に背を向けて泣き出した真彩…


泣いてる真彩なんていつぶりだ?


いつも何があっても笑顔でいるから、泣くイメージがなくなっていた。


そっと床に座り、背中をベッドに預ける。


今、真彩が泣いてるのにどうしたらいいかわからない…

真彩ならいつも抱きしめてくれていた。

けど、それは…

本当はアイツにしてほしいはずだよな。




『真彩…』




俺は何が言いたい?


そう考えた時、真彩が俺の背中に触れた…


振り返って見た真彩の目は腫れていて、泣いてたのはもっと前からだってわかった。


両手の親指の腹で、優しく涙を拭う…


それでも涙は止まらずに溢れ出した…


辛いよな…

好きなやつに、約束を破られたんだ。




『大丈夫だ…』


「ごめんね…那雲」




やっぱり、好きなやつの涙なんて見たくねーな。


いつもみたいに笑ってて欲しい。


でも、真彩を笑顔に出来るのも今はアイツなのか?


ふざけんなよ…




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