横顔だけじゃ、足りなくて



風邪なんてすぐに治る!


だからもう気にしない。




「泣いた和奏さんをほったらかしたなら私は怒ります!」


『真彩ちゃんってほんと優しいね』


「そんな…」




ゆっくり先輩の手が私の手に触れる…


心臓の鼓動がどくどくうるさい…


先輩の顔を見るのが恥ずかしくなり、目を逸らしてしまった。




『真彩ちゃん、ごめんね?
それから、ありがとう…』


「いえ、私は別に何も…」


『うぅん。
真彩ちゃんのお陰でちゃんと話ができた』




優しい先輩の声…


ダメ…

やっぱり見られません。


今さら自分の行動に後悔が募る…




『ねぇ、こっち向いて?』


「…」





ゆっくり視線を先輩の目元に戻す。


真正面は恥ずかしい…


横顔なら見られるのに横顔だけじゃ、足りない自分もいる。


けど慣れない…!




「柊良先輩…恥ずかしいです。」


『ははっ、ほんと正直だなー』




わ、笑った!


それだけで今は十分嬉しい!


先輩に笑顔が戻ったから




『それに、彗でいいからさ』


「えっ!?」


『彗って呼んでよ』




先輩ずるいです…!


その声のトーンは反則です…


頬が一気に熱くなる!




「す、彗…くん」


『もう1回!』


「彗くん」


『うん!それがいい』




先輩の笑顔が眩しいです。


どんどん好きが積もる…




< 110 / 287 >

この作品をシェア

pagetop