横顔だけじゃ、足りなくて
-逹奇 side-
明音先輩を上手くリードする。
これが今日の目標だったはず。
始めは良かったんだ。
明音先輩と屋台を回って、笑い合ったりしてた。
けど、花火が始まる直前に急に泣き出したんだ…
明音先輩の目からこぼれ落ちる涙…
「逹奇…ごめんね…ひくっ」
『…やっぱり、俺じゃダメっすよね』
きっとあの人がまだ、忘れられないんだ。
あの人の事を話す明音先輩は、いつもいつも楽しそうに笑っていた。
その笑顔が好きだったんだ。
俺は、あの人に恋していた先輩の事が好きだったのかもしれない。
「あたし、バカだよね…」
『…』
「今でもあいつが好きなの。
今日、逹奇と楽しもうって決めたのに、あいつとのお祭りの思い出ばっかり思い出してた」
ベンチに座って、ずっと下を向いて泣く明音先輩…
俺にいったい何が出来るんだよ…
先輩を笑顔にしたかったのに。
笑わせてあげたかった。
『明音先輩…』
ベンチから立ち上がった先輩は、俺の胸に飛び込んで来た…
短くて、毛先が跳ねた髪に触れる。