横顔だけじゃ、足りなくて
放課後になると、一目散にスポーツバッグを持ってドアまで行くと那雲は足を止めて振り返った。
『真彩、また明日な!』
「うん、バイバイ!」
互いに笑って別れると、私は図書室を目指した。
ほとんどの子が部活に行くわけで、図書室に行く人はいない…
ドアノブを開けて中に入るとたん、静かな空気が流れている。
左側の奥にあるソファー
いた…
柊良先輩…
『早かったね』
「いえ…」
急いで来たから頬がほんのり熱いのが自分でわかった。
先輩はあの時と同じように、本に葉を挟み、ずらしたネクタイに眼鏡を引っ掛けた。
長いまつ毛が上がって、私を見上げた…
『着いてきて』
ゆっくり立ち上がり、歩き出した先輩。
慌てて後を追う…