横顔だけじゃ、足りなくて
学校が終わり、今日は彗くんがバイトだから一人で家に帰ると、玄関を開けて聴こえる声。
この声は夏奈さんだ!
「那雲、レギュラー入りしてからもう一層筋トレ増やしてさー」
「えっ!?
那雲くん頑張り屋だねー」
…えっ!?
驚きのあまり、リビングに続くドアに手を掛けたまま止まってしまった。
那雲がレギュラー入り…
「真彩、帰ってるんでしょ?」
お母さんの声でやっとリビングに入ると、夏奈さんが笑顔で「お帰り」と言ってくれた。
お母さんたちが話しているテーブルに行って、自分の席に座る。
「那雲、レギュラー入りしてたんですか?」
「うん、1.2ヵ月前かな?
あれ、真彩ちゃん知らなかったの!?」
前に座る夏奈さんは目をパチパチさせていた。
1.2ヵ月前…
そんなのお母さんだって何にも!
知らなかったのは私だけ…か。