横顔だけじゃ、足りなくて
千加達が先輩と話してる中、私と柊良先輩は少し離れて話してる。
それもそのはず。
柊良先輩は何故か二人と距離をとって歩くため、二人が足を止めると廊下の壁に持たれていたのだ。
そこに私が話しかけてみて、今に至ります…
『あっ、そうだ。
この前の本、読み終わったよ』
「気に入りました?」
この前の本というものは、私がお気に入りだと言った本だろう。
推理小説が好きな私には、ぴったりな本だった。
主人公の男性の不意に見せる、不器用な優しさにグッときたのを覚えてる。
『うん、凄く良かったよ。
あーいう優しさ、真彩ちゃんは好きなの?』
「は、はい…」
『女の子はあーいう男が好きなんだなぁ』
そうクスッて先輩は笑った。
先輩は、きっと彼女には凄く優しいんだろうなぁ…
いるかはわからないけど…
『ねぇ、真彩ちゃんはあの子の事好きなの?』
「えっ?」
すると、先輩はチラリと那雲を見た。