横顔だけじゃ、足りなくて
小説のラストのページに小さなメモが挟んであった。
メモにはこう書かれていた…
大雨の中、一人で想いを伝える事が出来なかった女の子が泣き崩れていた。
声を枯らしながらずっと…
そこに一人の男がその子に傘を渡した。
「大丈夫?
こんなに濡れちゃ風邪ひくよ」
そう優しく手を差し伸べた…
別れの後には、必ず出会いがある。
この言葉を彼から掛けてもらい、また女の子は歩き出した。
「私、笑うから…
これから先、君を思い出す度」
そう言って、思い切り笑った。
と。
終わった小説に、自分なりにストーリーを書き足してハッピーエンドにしていた。
バッドエンドで終わる作品をハッピーエンドに変えている。
きっと、先輩は何冊もそう書き足しているのだろう。
「ずるいです。」
『ははっ!
俺はこうするのが好きなんだ』
先輩は目を細めて笑って、青空を雲で一面覆いかぶされた空を見た。