横顔だけじゃ、足りなくて
「那雲!」
『真彩か』
仰向けになって寝ている那雲は、自分の顔の上にタオルを置いていた。
私だと声でわかっても、タオルを顔から取らなかった。
「隣…いい?」
『うん』
那雲と同じように寝そべって、青い空をみつめる。
深呼吸をして静かに目を閉じる…
すると、風の音や草木が揺れる音、鳥の鳴き声に遠くから聞こえる人の声…
落ち着く…
「…悔しい?」
『はっ?
悔しくなんかねーし』
ゆっくり目を開けると、タオルを握りしめている那雲の姿が写った。
嘘だ
「じゃぁ、その目はなに?」
『これは…あれだよ。
んー…あっ!砂!砂が目に入ったんだよ』
必死で言い訳を探す那雲…
バカ。
そんな下手くそな嘘、誰が信じるのよ。
「那雲は頑張ったよ」
身体を起こして、そっぽを向いている那雲に近づいた。
タオルの下で泣いてたんだね。
だって目が赤いもん…
そっと手を伸ばし那雲の涙を拭った。
すると次々から涙を流す那雲…
肩を震わせ、泣き出す姿…
ほんと、あの頃と変わらない。