横顔だけじゃ、足りなくて



優しく頭を撫でる…



「もっと泣いていいんだよ」


『バカ!
もうガキじゃねーし』


「あっそう」




那雲から離れて次は私がそっぽを向く。


少し意地悪そうに…


強がり過ぎなんだよ。


すると、私の腕を掴んだ那雲。




『ごめん…
もう少し、一緒に居てよ』


「えー?
もうガキじゃないんでしょ?」


『お前なぁー』


「ははっ、わかってるよ!
一緒に居てあげるから」




那雲が泣いて、怒って…


笑ってくれるまで。


二人また寝そべって深呼吸し、落ち着いた那雲が口を開いた。




『真彩、あんまり試合見てなかっただろ』


「…バレた?」


『バレバレだっつーの!』




あー…バレてたかぁ。


後半、果歩先輩が気になってついつい試合に目がいかなかった。


でも、最後は見てた。

ちゃんとしっかり。




「ごめん」


『別に謝んなくていい。』


「なんで」


『真彩の声…聴こえたから』




えっ…


するとすぐに立ち上がり、私に手を差し伸べた。




『今のなし』


「へっ?」


『あーもう!
ほら、決勝戦始まるぞ!』




強引に私の手を引いて立たせ、走り出した。


もう!


ちゃんと聞こえてたよ。




「バカ…」


『今なんか言った?』


「言ってない」


『そっか』




私の手を引いて笑って走る那雲の笑顔…


やっと、いつもの那雲に戻ってくれたね。






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