横顔だけじゃ、足りなくて
-彗 side-
和奏と会うため、誰もいなくなった教室へと呼び出した。
この時間は掃除が済み、おそらく後は誰も立ち入らない教室だろう。
しばらくすると、肩にスクールバッグをかけた和奏が教室に入ってきた。
適当な机に鞄を置いて、まっすぐ俺をみつめている。
『もう、終わりにしよう』
「なんで…私は今でも彗が…」
『俺は、初めから和奏が好きじゃなかった』
これは、初めて口にした言葉であったため和奏は俯いた。
別れ話は和奏の気持ちを知りもせず、俺が一方的に終わらせてしまった。
随分酷いことをしてしまった…
「知ってたよ…初めから」
和奏はゆっくり顔を上げて笑っていた。
初めて和奏と言葉を交わした日も、女の子らしい可愛らしい笑顔だった。
照れくさそうに話す姿が良いと、あの時は素直に思ったんだ。
「それでも彗は私と付き合ってくれた。
いつ振られるかってビクビクしてた…
けど、それどころか好きが積もる一方だった」
初めて知る互いの真実…
言葉上、付き合ってはいたがあまり和奏を知ろうとはしなかった。
デートにも誘った事はないし、抱きしめた事も、キスをした事さえない。
本当に付き合っていたのかさえ疑われる距離感だった。
でも、和奏は何も言わなかった。
ただ、学校で毎日側にいただけ…