Y U R A 〜その忍、黒き蝶の如し〜
右手には、釜戸。

左手には、履物を脱いで上がった床に、だれかが布団に包まり横になっていた。


「お袋、帰ったぞー!」


竜之助の声を聞くなり、布団からだれかが起き上がる。


「おかえり」


胸まである長い黒髪を耳の下で1つに束ね、前に垂らしている女性。

どうやら、この人が竜之助と市の母親のようだ。


「母ちゃん、ただいまー!」


由羅の背中で、市が声を出す。
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