Y U R A 〜その忍、黒き蝶の如し〜
「市もおかえり。…あら、そちらの方は…?」


竜之助の母親は、すぐに市をおぶっていた由羅に気づく。


「はじめまして、椿と申します」


由羅は市を下ろして、頭を下げてあいさつをする。


「はじめまして、竜之助と市の母です」


微笑む、竜之助の母親。

…しかし、その頬は少し痩せこけて見えた。


「お袋は、無理して起き上がらなくていいよ」


竜之助は履物を脱ぐと、母親の枕元に腰を下ろす。
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