Y U R A 〜その忍、黒き蝶の如し〜
「近頃、珍しいものばかりを売る店が現れたと耳にしたが、それはこの店で間違いないか?」

「はい。そうでございます」


颯は頭を下げたまま、歯切れよく答える。


「その店で、笛の演奏に合わせて踊る娘がいると噂になっておるが、それはそなたのことか?」

「はっ、私でございます」

「そなた、名は?」

「椿と申します」


その男は由羅を見下ろしながら、蓄えた髭を指でなぞる。
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