Y U R A 〜その忍、黒き蝶の如し〜
「そんな、大したものじゃないのに」

「そんなことないっ。椿は踊りの稽古で忙しいっていうのに、時間を割いてまで市に作ってくれたんだろ?」

「稽古…、まぁね」


嘘をつく由羅の笑顔は、ほんのわずかだがぎこちなかった。

しかし、ただの町人の竜之助には、それに気づくことはなかった。



「お姉ちゃん、あっちの川辺で遊ぼ!」


市が川の方を指差す。


「うん、いいよっ」
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