Y U R A 〜その忍、黒き蝶の如し〜
「ああ。市を攫った男を…殺そうとした」


由羅は、手に汗がじわりと滲み出るのがわかった。


…それを聞いた竜之助は、果たして一体どんな顔をしているのか。


ついに、幻滅されたのではないか。


由羅の脳裏を悪いことばかりが過り、なかなか俯いた顔を上げることができなかった。


…すると。


「でも、殺さなかったんだろ?」


竜之助は由羅の肩に手を添えて、まっすぐ由羅を見つめた。
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