Y U R A 〜その忍、黒き蝶の如し〜
「あ…ああ。市が、“殺さないで”と叫んでな」

「…そっか。市がそんなことを」

「市のおかげで、我に返れた」


市の叫び声がなければ、由羅は男の心臓をひと突きにしていた。

あのときの由羅は、殺しになんの躊躇いも感じない“黒蝶”だったから…。


「竜之助も市も、兄妹揃っておかしなことを言う。憎むべきはずの相手を“殺すな”と」

「そりゃ、俺も市もそんな由羅は見たくないからさ。市も、由羅のことを慕ってるからな」
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