Y U R A 〜その忍、黒き蝶の如し〜
竜之助は、にっこりと微笑む。


「それに…」


しかしその言葉を発して、その表情が次第に雲っていく。


「それに、人を殺しても憎しみしか生まれない」


竜之助は遠くを見つめながら、ポツリと呟いた。


「俺だって、市を攫って傷つけたヤツらは許せねぇ。でも、もしそいつらを殺したとしても同じなんだよ」

「同じ…とは、どういうことだ?」


由羅の問いに、竜之助は市の頭を撫でながら答えた。
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