Y U R A 〜その忍、黒き蝶の如し〜
「そうだな」


美影は、涙目で兵たちを見上げる。

恐怖で動くことも、声も出すこともできなかった。


ただただ心の中で由羅の名前を何度も叫び、もうダメかと諦めた美影は目をギュッと強くつむった。


そして、1人の兵が刀を振り上げた。


…そのときっ。


ボトッ…


鈍い音と共に、刀が床に落ちた。


…いや。

よく見ると、それは握られた両腕がついている刀だった。
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