空よりも高く 海よりも深く
 護られるだけの存在になるな。フェイレイの後ろではなく、隣を歩ける存在になって欲しい──。

 その答えのひとつが、今のリディルの『ギルドに入りたい』という言葉になっているのか。

「……リディルがああ言ったのは、もしかして私のせいかもしれん……」

「少しは影響があるのかもしれないね。でも、リディルはちゃんと自分で考えて形にしたんだと思うよ。フェイはリディルのために。リディルはフェイのために。ふふ、いじらしいね」

「……かわいいヤツめ。でも危険だから認めんぞ」

「そうだね」

 アリアもランスも親として、娘を危険な道へは進めたくなかった。



 
 けれどもリディルは諦めなかった。

「心配、かけるけど。でも私、がんばりたいの……!」

 と、毎週アリアとフェイレイが帰ってくるたびにそう説得を続けた。その度に家族は反対を続けた。何度も何度も話し合った。

 一向に認めてもらえない状況に、リディルもこのままでは説き伏せられてしまうと思ったのだろう。

 ギルドの精霊士養成学校入学者募集要項を内緒で取り寄せたり、ランスに内緒で飛行艇に乗り込んでギルドへ赴き、養成学校の見学をしたりと、着々と自分の夢に向かって行動を始めたのである。


「お、思ったより行動派だった……!」

 アリアは秘書のブライアンから『姪御さんが見学に来ていますよ』という報告を受け、執務室の机で青くなっていた。

 人見知りで大人しいリディルが、一人で動くとは想像していなかった。しかもきちんと段階を踏んでいる。しっかりしている。ここは親として娘の成長を喜ぶべきか、それとも哀しむべきか。

「くそ、ランス、ランスは何をしていたんだ!」

 ランスはその頃、リディルの置手紙を見つけて頭を抱えていた。そしてアリアと同じく「思ったより行動派だったんだね……」と呟いていた。

「ああ、こんなときにすぐに連絡を取れないとはっ。我が家にも通信機を置くべきだった!」

「はあ。まあ、支部長権限で出来ますけどね」

「なんだとっ? 貴様、出来るのなら早く教えろ!」

「聞かれませんでしたので」

 しれっと答えるブライアンに、ギリギリと歯軋りをする。

 それからすぐにアストラ村の自宅に最新型の通信機を取り付ける許可を取った。カメラ付きパソコンで、相手の顔を見ながら通信出来る仕様だ。

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