空よりも高く 海よりも深く
「惑星王って、カッコイイ人だね」

 ずっと姿絵を見上げているリディルに、フェイレイがそう声をかける。

「……そうかな」

「あれ、ずっと見てるから、そう思ってるのかなー、と思ったんだけど」

「別に」

 リディルはふいと視線を逸らして、後ろに並んでいた人と入れ替わり、歩き出した。フェイレイもそれに続き、アリアとランスも歩き出す。

「ただ……」

「ただ?」

「結婚って、どんな感じなのかと思って……」

「結婚が?」

 リディルの呟きに、フェイレイはしばらく思案した後、両親を振り返った。

「……仲良くラブラブする感じ?」

 なんだその阿呆な答えは、とアリアが頭を抱える。ランスは苦笑いだ。

「父さんと母さんみたいな感じなら、結婚って、いいものなのかな……」

 そう言うリディルに、フェイレイは目をパチクリさせて。そして顔を輝かせた。

「じゃあ俺と結婚しよう!」

 いきなりの結婚宣言に、アリアとランスは驚愕した。

「えっ……」

 リディルもいつもの無表情ではなく、翡翠色の瞳を大きく見開いている。周囲の街人も、急なプロポーズを微笑ましそうに見ている。

「え、でも、結婚って……」

 戸惑いは見られるものの、リディルの頬は赤く染まっている。良い反応だ、とアリアとランスは期待を膨らませる。

 今まで何の進展もなかった二人が、ここに来て急展開だ。これもリディルの兄君のおかげだろうか、ありがとう神よ! とアリアは内心小躍りしそうになった、のだが。

「結婚したらリディルと仲良くラブラブ出来るもんね? 毎日一緒に遊べるよ!」

「は?」

 思わずアリアが声を上げた。

 それに対し、フェイレイは少し首を傾げ、そして笑った。

「結婚したら同じ家に住んで、一緒にご飯食べて、一緒に遊んで、それで、父さんと母さんみたいに行ってらっしゃいのちゅーするんだよね?」

 無邪気な息子の回答に、アリアは眩暈がした。

 

 駄目だ。

 こいつの恋愛情緒は5歳児で止まっている。とてもじゃないが結婚なんて考えられるレベルじゃない。



 アリアはふらりと倒れそうになり、ランスがそれを受け止める。

 リディルは胡乱な目でフェイレイを眺めていた。その顔には『こいつの結婚しようは当てにならない』と書いてあった。





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