空よりも高く 海よりも深く
「星府に見つかったら、迷わず自分たちを差し出せと言われていた。だが、そのときはヴァンガード、お前を頼むと……言われていたよ」

 アリアはポン、とヴァンガードの肩を叩いた。

 ヴァンガードの大きく見開かれた瞳からは、ボロボロと涙が零れいてた。

「卑屈になるな、お前は愛されている。強く生きろ。それがご両親の願いだ」

 ガクリと膝をついて泣き崩れるヴァンガードに、フェイレイは微かな笑みを浮かべると、アリアに話しかけた。

「……リディルの、母さんは? 一緒に逃げてきたんじゃないの?」

 アリアは首を横に振った。

「リディルを逃がす時に、自らを盾にして星府軍の攻撃を防いだらしい。……あの子の表情が乏しいのは、そういう辛い想いをしたことを、潜在的に覚えているからなのかもしれないな」

 それを聞いたフェイレイは、閉じられてしまったエレベーターの扉を見た。

「……母さん」

「駄目だぞ」

 フェイレイが何か言う前に、アリアは止めた。

「解っているだろう。アレクセイには敵わない。お前には無理だ」

「だけど!」

「お前も、死なすわけにはいかん」

 今思い返しても恐ろしい。あのままアレクセイに首を撥ねられていたらと思うとぞっとした。握りしめる拳が震えてくる。

 あれと相対し、死ぬのは自分でいい。それが順番というものだろう。アリアはリディルを助けるために、絶対に敵わない相手との闘いを決意する。

「お前たち、少し休め。疲れただろう……」

 アリアも少し疲れた顔で、支部長室を出る。ブライアンもそれに続く。

「飛行艇の用意は出来たか?」

 廊下を突き進み、作戦本部になっている部屋へと急ぐ。

「はい。パイロットはタウを指名しておきました」

「マックスライアンの息子だな。ヤツを凌ぐ腕前と聞いている。……うまく戦艦に取り付いてもらおう」

 国民の避難が終了したと知らせがあり次第、アリアは戦艦に乗り込むつもりだった。フェイレイのせいであまり時間が稼げなかった。戦艦が飛び立つまでに間に合うだろうか……そう、考えながら歩いていくと。

 アリアの腕にある通信機に着信があった。

 フェイレイだ。

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