空よりも高く 海よりも深く
 そのフェイレイ、最後の魔力検査でとんでもないことをやらかした。

 魔力測定に使うのは、太古の地層から発見される『精霊石』と呼ばれる石だ。

 精霊の力が秘められていると言われる無色透明の丸い石に魔力を注ぎ込むと、透明だった石が様々な色に染まり、光を放つ。その色と光の強さで、触れた者の得意な属性とおおよその魔力量が分かる。

「ではフェイレイくん、この石に、思い切り魔力を込めてみてくださいね」

「どうするのー?」

「精霊に呼びかける時を思い出してみてください。フェイレイくんは精霊の姿を見たことはありますか~?」

「うん、毎日ごあいさつするよ」

「まあ、すごい」

 メイサは目を見開きアリアを振り返った。アリアは軽く頷いてみせる。

 毎日精霊の姿を見る。言い換えれば、毎日精霊が姿を見せる。それは召喚する場合を除いては、精霊士でも滅多にないことであった。

「……これは期待出来そうです。フェイレイくん、いつものように精霊に挨拶をしてみましょう。お腹に力を入れて、ずーっと遠くまで声を届けるイメージでやってみてください。まずは私がやってみますね。……精霊さん、こんにちは~」

 詠うようなメイサの声が響くと、彼女の掌に乗っている透明な丸い石が鮮やかなアクアブルーに染まり、眩い光を放った。

「うわ、眩しい~」

 フェイレイは少し顔を逸らす。あまりにも眩しくて直視出来ないのだ。光の強さはメイサの魔力の強さを表していた。

「……と、こんな風にするんですよ~。私の場合、水属性の精霊士ですから、水色に染まりましたね~。たまーに緑色に変わるのが見えますか~?」

「はいっ」

「これは地属性も使えるということです。セルティアの精霊士は森の精霊と親和性が高いので、大抵の人は適正を持っているんですよ~。一応、精霊士は全属性の精霊を召喚することが出来ますが、やはり相性がありまして、得意な属性というものが出てきます。自分の得意な属性を分かっている方が、他の兵たちとの連携も取れて戦闘を優位にすることが出来ます。剣士の場合もそれは同じですので、自分の属性を今から見極めましょう。では、フェイレイくんもやってみてください~」

「はいっ。えーと……」

 フェイレイがチラリと視線を彷徨わせると、ふわりと風の精霊グィーネが横切っていくのが見えた。

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