夏彩憂歌
「……久しぶり」

「おう」

何事もなかったような挨拶を交わす。

心はこんなにも動揺しているのに。



何一つ変わらなかった。

彼の優しい眼差しも、柔らかい声も、焦げ茶の髪色も、全部。

ただ決定的に違うのは、あたしたちにはもう"次"がないってことだ。

これが、最後。

きっと、彼もよく分かっている。



陽は射しているのに、それは驚くほど冷たくあたしたちを照らしていた。
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