夏彩憂歌
ミーン、ミーン……

蝉の声だけが響き渡る、静かな田舎町。

あたしは1週間、ここに滞在する予定だ。
といってもまだ来たばっかり。
なのにもう飽きてきてる。

だって、ここには、何もないんだもの。

可愛いお洋服が売ってるショッピングモールも、友達と一緒に歌えるカラオケも、コンビニすら歩いて行ける距離にはない。

ああ、何てつまんないんだろ。

見渡しても畑、田んぼ、山、……緑ばっかじゃないか。

確かに空気や景色は綺麗だけれど、ツマンナイ。

中学2年生のあたしに、こんなところで何して楽しめって言うんだか。

だけど仕方ない。
毎年、夏休み中にやってくるお盆には、家族でここにやってくるのがあたしが小さい頃からの習わしだもの。

ここは、ただ蝉の声が暑苦しく響き渡る、田舎町。

あたしのおばあちゃんの家だ。
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