夏彩憂歌
おばあちゃんはあたしのショートの髪を皺くちゃな手でくしゃりと撫でる。

おばあちゃんの手は暖かい。

「みくちゃんは、今、好きな男の子はおるんかね?」

不意におばあちゃんが聞いた。

あたしの頭には、真っ先に彼の姿が浮かぶ。

三浦くん。

三浦義之くん。

いつからかは分かんない。
だけど、もうずいぶん前から……小学生のときからずっと、あたしは三浦くんに片思いしてる。

「うん……いるよ」

お母さんにだってこんなことは言わない。
いつも聞かれても、頑なにいないと言い切る。

だけど、おばあちゃんは……

おばあちゃんは、特別。

だって、特別あったかくて、特別優しい。

「そうかね。いいことやないの。
おばあちゃんは、素敵なことやと思うんよ。
心がね、ぬくといやろう?」


おばあちゃんにはお見通しなのかな。

三浦くんのことを考えると、あたしは心から頭まで全部沸騰しそうになる。
きっと顔まで真っ赤だ。
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