夏彩憂歌
「すごい、汗だよ……悠ちゃん」

「あ?…ああ、ヘルメット…」

そう言いながら彼は髪をかきあげた。

水滴がきらりと、地面に放たれる。


彼は手に持っていたヘルメットに視線を落としながら弄ぶ。

「免許、とったんだ…?」

「バイク?うん、ずっと欲しかったから」

知ってる。

知ってるよ、悠ちゃん。

「やっと車校で免許も取れて、念願のマイバイクゲット」

「うん」

彼のバイクは艶々と光る黒色の大きなもので、高校の頃からずっと欲しいと言っていた、文字通り念願のもの、なのだろう。

「いくらしたの?」

「200万くらい?かな」

「ローン?」

「そっ」

「月いくら返済するの?」

「ん〜…4万くらい?」

「え…」

心配そうになったあたしの顔を悠ちゃんは覗き込んだ。

「だーいじょぶだって」

あたしの大好きな笑顔で。

そう言った。
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