夏彩憂歌
「おばあちゃんね、もうひとつ、慶兄さんの望みを叶えるために……」
そこでおばあちゃんが家の中にあがって取り出したのは、英和辞典と英語学習のテキストだった。
「英語勉強しとるんよ。いい歳やけど」
くすりとおばあちゃんは笑う。
つられてあたしも笑った。
"I will die for you."
おばあちゃんのたどたどしい発音の英語が、はっきり響き渡る。
俺はお前のために死ぬよ。
慶兄さんが残したその言葉が、今、彼の望みどおり英語となって宙に舞う。
「どう?みくちゃん。英語教室の先生にちゃんと教えてもらったんよ」
「すごいよおばあちゃん!!」
顔を皺くちゃにして笑うおばあちゃんは、あたしの自慢のおばあちゃん。
たくさんつらいことを経験してきて、今、最高に綺麗な笑顔を見せる、おばあちゃん。
「みくちゃんに褒めてもらえたし、これでやっと慶兄さんのお墓の前で教えたることができるわ」
慶兄さんはきっと、お墓で微笑むだろう。
見たことはないけれど、目に浮かぶ。
いつまでも空に残る彼の想いは、おばあちゃんに注がれるその優しさは、きっと空からの贈り物。
そこでおばあちゃんが家の中にあがって取り出したのは、英和辞典と英語学習のテキストだった。
「英語勉強しとるんよ。いい歳やけど」
くすりとおばあちゃんは笑う。
つられてあたしも笑った。
"I will die for you."
おばあちゃんのたどたどしい発音の英語が、はっきり響き渡る。
俺はお前のために死ぬよ。
慶兄さんが残したその言葉が、今、彼の望みどおり英語となって宙に舞う。
「どう?みくちゃん。英語教室の先生にちゃんと教えてもらったんよ」
「すごいよおばあちゃん!!」
顔を皺くちゃにして笑うおばあちゃんは、あたしの自慢のおばあちゃん。
たくさんつらいことを経験してきて、今、最高に綺麗な笑顔を見せる、おばあちゃん。
「みくちゃんに褒めてもらえたし、これでやっと慶兄さんのお墓の前で教えたることができるわ」
慶兄さんはきっと、お墓で微笑むだろう。
見たことはないけれど、目に浮かぶ。
いつまでも空に残る彼の想いは、おばあちゃんに注がれるその優しさは、きっと空からの贈り物。