夏彩憂歌
「みくちゃんの名前はね、もし未来があればどうか明るい未来になっとるようにといつも願ってた、慶兄さんの想いからもらって私がつけた名前なんよ?」

「そーなの!?」

山村未来。やまむらみく。

それがあたしの名前。

慶兄さんとおばあちゃんの重ねた時間と絆が、きっとあたしの中で生きてる。

「素敵な名前、ありがとうおばあちゃん」

微笑むおばあちゃんにも、今のあたしと同じ、14歳の頃があったんだ。

ちょうど、終戦の年。

――そうだ、千羽鶴を折ろう。

戦争で失われた尊い命のために。

できあがったら、慶兄さんのお墓に置いてこよう。

おばあちゃんと一緒に。


暇だなんて、あたしのばか。やることはいっぱいだ。

失われた命はもう、甦ることはない。
あたしの微々たる力で戦争をなくすことだってできない。

だけど。

忘れずにいよう。

おばあちゃんの話を深く心に刻もう。

たったそれだけでも、小さな一歩ではあるかもしれないもの。

今のあたしにできることは、忘れずいることだけだ。

< 54 / 79 >

この作品をシェア

pagetop