夏彩憂歌
小さく開いて中を見る。

悔しいけど、それではっきり悟った。

彼女にキモチは、多分もうこの手の中には戻ってこない。

そう、悟った。

封筒と同じ薄紫の便箋のほかに、小さくて硬くて、でも俺たち2人の間ではすごく思い意味を持つものが一緒に入っていたから。


でもやっぱり、ほんとに悔しいけど、どんだけ考えても俺が彼女にしてやれたことなんて少しも思い浮かばない。

たくさん泣かせた。たくさん傷つけた。

それでもこんな俺を大事だって言ってくれた。

そんな彼女のことを、誰よりも大事だと思ってた。

だけど、考えれば考えるほど、彼女が俺と一緒にいる理由はなくなってく。

……ほんとに悔しいけど。

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